小津安二郎のキャメラが捉える原節子の向こうには、いつも中国で戦病死した天才・山中貞雄の存在があった。生誕120年/没後60年を迎える巨匠の傑作群の謎を解く評伝。「晩秋」「麦秋」「東京物語」の静寂の美を、生者と死者の間の三角関係が充たす。